適応障害の症状
- 憂うつ、気分が落ち込む(抑うつ気分)
- 不安、心配、緊張、苦悩
- いらいら感、怒り
- 会社に行けない、学校にいけない
- 衝動的な行動を起こしてしまいそうと感じるが、そうすることはまれ
Adjustment disorders
適応障害とは、はっきりと確認できる重大な生活の変化あるいは心理社会的なストレス因子をきっかけとして引き起こされた苦悩や不安、心配、気分の落ち込みなどの情緒障害の状態であり、社会的または職業的(学業上の)機能と行為に著しく支障をきたします。重大な生活の変化としては転居、就学、就職、転職、転勤、部署移動、結婚などがあり、ストレス因子としては個人的な不幸(本人・家族の病気など)、仕事上の問題(仕事量が多い、上司が厳しいなど)、人間関係の問題(不和、別離など)、生活上の危機(失業、経済的問題、自然災害)などがあります。
個人的素質あるいは脆弱性は、適応障害の発症の危険性と症状の形成に大きな役割を演じていますが、ストレス因子がなければこの状態は起こらなかっただろうと考えられます。発症は通常ストレス性のできごと、あるいは生活の変化が生じてから1か月以内であり、症状の持続は通常は6か月以上を越えません。しかし、ストレス因子が慢性的である場合や長時間持続した場合にはより長引くことがあります。精神科外来患者の10~30%、精神科のコンサルテーションを受けた一般病院の入院患者の12%近くが適応障害と診断されたという報告があります。
精神療法は適応障害の有効な治療手段です。薬物療法は優先されませんが、不眠や不安などに対症療法として睡眠薬や抗不安薬を使用することがあります。ストレスとなっている要因を可能な限り取り除くあるいは最小限度にするように環境調整が必要な場合があり、危機介入として、仕事の負荷軽減や部署移動、時には休養などについて産業医との相談や診断書記入などを行うことがあります。その場合、本人の適応能力の向上や成熟過程と自然回復を妨げないこと、不必要に長い休養や回避と疾病利得を助長しないことに注意を払います。
参考文献
カプラン臨床精神医学的テキスト
ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル